優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第18章 揺れる日々
咲をベッドに横にして、布団をかける。
直ぐに目を閉じたから、眠るのも早いだろうと思い、そっと立ち上がると、咲が小さな声で言った。
「春ちゃん……」
「うん?」
うとうとしながら、薄目を開けている。
「行かないで……」
急に心細くなったのか、咲がつぶやいた。
ふっと笑みをこぼして、一緒に布団に入ると、咲の方に寝返りを打って、そっと話しかける。
「どうしたの、寂しくなっちゃった?」
寝られるように……
そう思って、咲の胸の上で、ゆっくりとリズムを取る。
ポン、ポンっと、規則的に手を動かす。
完全に目を閉じた咲の呼吸が、安定してくる。
もうすぐ寝落ちするかな……
そんなことを考えていたとき、咲の口が小さく動く。
「わたし……まだ……」
「ん?」
掠れて小さな声が、耳に届く。
手を止めて、咲の言葉を拾うために、耳を澄ました。
「まだ、春ちゃんの気持ち……聞いてない」
「え……?」
「春ちゃん、九州に行くこと、どんな気持ちなのか……」