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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第18章 揺れる日々

5

春ちゃんは驚いたように間を置いたあと、そっとこう言った。


「……つらいよ。置いていけないと思った」


やっと、耳にすることができた、春ちゃんの気持ち。

だるい体をゆっくりと動かして、春ちゃんの方を向く。向かい合うように横になって、目を閉じた。

春ちゃんが、わたしの頭を撫でた。


ゆっくりと、温度を確かめるように、手を動かす。そうされているのが、とても心地よかった。
この1年、ずっとずっと、安心する体温をわたしに与えてくれていた。

わたしも、突然それがなくなってしまうことを考えると、不安で寂しかった。
春ちゃんもきっと同じ気持ちだと思っていたけれど、春ちゃんはそれを表にしなかった。わたしに気を使ってくれていたのと……。


「できれば、ずっとここに居たかった」


……春ちゃん自身が、崩れないようにするためと。


ポツポツと、春ちゃんは言葉を浮かべる。
低くて落ち着いた声が、少しだけ震えているような気がした。

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