優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第19章 エピローグ
「……優、今日、土曜日」
「あぁ、でも模試があるとかなんとか言ってなかったか?」
まるで自分が遅刻してしまいそうだというくらい、迫るように優が言った。
「それは来週だよ、今月の1番最後の土曜日」
「……」
「……」
食卓に、一瞬、沈黙が落ちた。
「……っはぁぁ……」
優が盛大にため息をつきながら、力が抜けたようにその場にしゃがみ込んだ。
「ゆ、優……!」
こんなにも力が抜けた優は初めて見た。
「んー……すまん」
「わたしは大丈夫だよ」
優は頭をわしゃわしゃとかきながら、横目でカレンダーを確認し、「あーー……」と小さな絶叫を繰り返した。
忙しくしていて、4月になってからまともに休みを取っている姿を見かけなかったから、なおのこと感覚が狂っていたらしい。
その珍しい光景にクスクス笑うと、立ち上がった優にぽんぽんと頭を撫でられた。