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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第19章 エピローグ

「もしかして、熱出したの久しぶりかな? 息止めないで、深呼吸してみようか」

体のしんどさと、ちょっとした緊張で、上手く息ができないのがバレる。努めてゆっくり、息を吐き出すと、吹田先生が頷いた。

カルテを見ながら、わたしに尋ねる。

「腹痛は出てない? 下腹部とか特に」

訊かれて、首を横に振る。

「そっか、それなら大丈夫。お腹痛かったら早乙女先生呼ぼうと思ったけれど」

……先月、定期検診であの恥ずかしい椅子に乗ったばかりだったことを思い出して、身震いする。
吹田先生はわたしの表情を見て、軽やかに笑った。
ちょっと意地悪なところがあるらしい。

「風邪だね。でも少し熱が高すぎるし、だるくて動けないと思うから、点滴をするよ。腕、チクッとするね」

あまり痛みを感じないまま、点滴が始まって、だんだんと眠くなっていく。

「薬は熱を下げる薬と咳を止める薬を出しておくね。どっちも1日3回。解熱剤は熱が下がったらやめていいけれど、咳止めの薬は無くなるまで飲んでね」

薬の説明もひと通りすると、

「少し、眠るといいよ」

吹田先生はそう言い残して、わたしにふんわりと布団をかけると。カーテンの外へ出ていく。

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