優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第4章 それぞれの午後7時
AEDを取りに行こうと、反射で動きかけた足が、止まってしまった。
路上に横たわる薄く街灯に照らされた少女の顔を見て、絶句した。
……白河さん……なんで?
浅く苦しそうな息を、弱々しく続ける彼女に、恐怖を感じた。
体から、血の気が引くのがわかる。ぞわぞわ、ざわざわと、得体の知れない音が俺の体の中を駆け巡って、その途端に悪い思考に支配されそうになった。
あの時と、一緒だ。あの時と……。
一瞬、俺が動きを止めて、顔を強ばらせたことを、優は見逃さなかった。考える隙を与えないくらいの勢いで、彼は怒号を飛ばした。
「何してんだ!! 息も脈も、まだある!! いつ止まるかわからん!!春斗、AED早く!!!! 」