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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

「でも、優が白河さんを見つけてくれて、よかった。俺だったら、助けられなかったと思う」

潰れそうな声で、春斗は口にした。
きっと心からそう思っているんだろう。
でも実際そうなっていたら、春斗は全力で目の前の子どもを助けようとしていただろうし、その結果は誰にもわからない。

「あほか。現場は全部偶然だ。終わったあとに、もしもで結果を考えるのは違うだろ」

はっとしたような表情をして、春斗は俯いた。
きっと、昼間の健康診断のことも、考えてしまっていたのだろう。
俺の言った言葉は、白河咲の件だけではなかった。過去の……もう昔になってしまうような、春斗が悔やんでいることにも向けていた。

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