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Bye-Bye

第3章 はじめての体験

誠司と翔太が、朝駅で待ち合わせをして一緒に登校し、一緒に下校して駅で別れるというのは日常になり始めていた。

学校でもつるむ時間が増えていく。

翔太と一緒にいてすっかり性格が明るくなった誠司は、いつしか他のクラスメートとも仲のいい関係になってきた。


ある日の下校のとき。

誠司が「じゃあね」と言おうとしたとき、翔太が

「トイレ付き合って」

といった。「連れション」だと思った誠司は一緒にトイレに行った。

しかし、翔太が向かったのは「個室」のほう。誠司を招き入れ、狭い個室の中で二人きりになった。

翔太は、ポケットから何かを取り出した。タバコとライターだった。

「誠司はタバコ吸ったことあんの?」

「ないに決まってるよ。前園君はいつから吸ってるの?」

「この間。最初はむせたけどなかなかいいぞ」

といい、タバコをくわえ火をつけた。

うまそうに一口吸うと、

「誠司も一口吸ってみなよ」

と勧めてきた。誠司は少し迷ったが、

「前園君がそういうなら・・・」

とタバコを受け取り、一口吸った。苦かったが、むせることはなかった。

「ごめんな。悪いこと教えちゃったな」

と誠司がくわえたタバコを受け取り再び吸い始めた翔太。吸い終わると、携帯灰皿に吸い殻を入れた。ばれないようにしているのだろう。

「でも今のってさ、間接キスじゃね?」

と翔太は笑顔で言った。

「そ、そうだね・・・。」

と少し戸惑いながら誠司が言った。


翔太と別れた誠司は、家に戻り私服に着替え、家から少し離れたコンビニに向かった。



「すみません、69番のタバコください」



翌日から、朝学校に行く前と帰りの別れ際は、トイレの個室にふたりで入るのが新しい日課になった。同じ銘柄のタバコを吸い、意味もなく吸っているタバコを交換したりもした。

「また前園君と間接キスしちゃったね」

誠司が言うと、翔太は

「嬉しい?」

と聞き、

「ん・・・別に。」

と誠司が答えると少し残念そうな顔をした。



誠司は家でもタバコを吸うようになった。臭いがつくといけないので、ベランダに出て吸うことにしている。

ボーっと夜景を眺めながら、

(前園君、今どうしているのかな?)

と想いにふけるのであった。

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