『龍と鳳』第12章「【思い出編】Memories」 45ページ - ちょっと大人のケータイ小説
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龍と鳳

第12章 【思い出編】Memories

オイラ達二形は文字通り二つの形を持つ存在で、人の世では「神獣」とか「精霊」なんて云われてる。
人の姿と、獣の形をしたエネルギー体と、己を自由に変えられる生き物だ。

同じような存在はこの星のあちこちに居て、海の向こう、遥か西や東では、シェイプシフターって呼ぶらしい。

面倒だから詳しいことは省くけど、二形には人から生まれた基本が人形(ヒトガタ)の場合と、自然のエネルギーが集まって生まれた基本がエネルギー体の場合がある。

オイラは空で生まれた。
だから龍の姿が本性。
生まれてしばらくの間は龍のままで、ある程度育たないと人形を取れなかった。
だもんで、お社で暮らすようになって最初のうち、オイラはチビ龍の姿でいつも緋龍の肩や頭の上に乗っていた。

あ、緋龍のことを、オイラはずっと「しょーちゃん」と呼んでたんだ。
だからこの話の中ではそれで通すことにする。



しょーちゃんは日中は大体龍の姿で、陽が沈むと人形になってお社の中に入ってた。
チビの頃の思い出で真っ先に浮かぶのは、夜空の星。
寝る前にいったん外へ出て、星を眺めるのがオイラ達の習慣でさ。
オイラはしょーちゃんから沢山の星座を教わった。

今にして思うと相当妙だった気がするけど、しょーちゃんは龍の姿の時も人の姿の時も、いっつもチビ龍のオイラをその躰に乗っけてて。
殆どアレだよ、ねずみの国で人の子が被ってる帽子状態。

だってさ、肩だけに乗ってるとズルズル滑るんだもん。
だからオイラいつも、頭の上に顎を乗せて手で髪を掴んでた。

『しょーちゃん、オイラお空に行きたい。
お空のキラキラ、近くで見る』

「お、また始まった。
智は星が気になるんだなぁ。
夜に空を泳ぐのはとても疲れるんだ。
智がもっと大きくなってから一緒に行こうな」

『キラキラ消えない?
オイラがおっきくなるの待ってる?』

「星の寿命は永いから大丈夫だよ。
……いつか智が夜も泳げるような大人の龍になったら、きっと星よりも下を見るのが楽しくなるかもな」

『なんで?』

「高い波動の魂は遠くからでも光って見えるんだ。
空から見下ろした時、大地で一生懸命生きてるイノチの光がわかる。凄くいじらしくて美しいよ」

『いじらしい?』

「そう。とっても健気」

龍は本来あんまり感情が豊かな方じゃない。
でもしょーちゃんは、愛とか慈しみとか、よく口にしてたよ。

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