メランコリック・ウォール
第3章 意外な素顔
私はちょっと照れながら新しい紙皿を取り出した。
「うぅ~ん…でも私、和食はちょっと…やめときますぅ」
桜子ちゃんの一言で、ゆりちゃんの表情が変わった。
「親方やみんなの口に合うように和食にしたのに…何日も前から、アキさんメニュー考えてくれてたんだよ?」
怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えるゆりちゃんの顔は曇っていた。
「桜子っ!!!!お前、なんて失礼なこと言いやがる!帰れお前はっ!!」
怒鳴る親方をオサムがなだめる。
「まぁ、まぁ…年頃の子なんで、仕方ないですよ親方。ね?」
親方はまだ桜子ちゃんを睨んでいるが、当の彼女は「カクテルとか飲みたいなぁ。おつまみも、もっと洋風なのが好き♪」なんて言っている。
「おいアキ、お前、なんか買ってきてやれ」
オサムが言い出すと、親方が止めに入った。
実際、私も驚いた。
なんで私がそこまでしなきゃいけないのか。
「アキさんに行かせるくらいなら、私行きますけど。っていうか、自分で買ってくればいいじゃん」
ゆりちゃんが言うが、オサムも引かなかった。
若いからとデレデレして、いつもいちばん桜子ちゃんを甘やかすのはオサムなのだ。
なんだかもうこの場にいるのがしんどい。
一刻も早く開放されたい。
「いいよ、私行ってくるね」
なるべくにこやかに立ち上がると、親方が言った。
「アキちゃん、いけねえ。コイツぁ舐めてんだ。行かなくていい!」
「まぁまぁ、親方。アキに任せましょうって。ね、ほら。桜子ちゃんもせっかく来たんだし」
人をコキ使っておいて、どの口が言うんだか。
いつしか桜子ちゃんへの憤りよりもオサムに対しての不信感が募る。
「アキちゃん、いけねえって…!そんなら、せめて森山連れてってくれ。おい、森山」
親方が声をかけた時には、森山さんはすでに立ち上がっていた。