メランコリック・ウォール
第22章 家族
夕方、義父に夕食を用意するとまた部屋へ戻った。
携帯には
[もうすぐ家に着く]
と、キョウちゃんからメールが入っていた。
声が聞きたい…ーー。
[家に着いたら電話くれる?]
メールを送ってから20分ほどで、着信があった。
「もしもし」
「アキ。ただいま」
「おかえりなさい。ごめんね、疲れてるのに…」
「俺もアキの声聞きたかったから」
「…ん…っ」
ふいに、涙がこぼれそうになる。
この家では異物である私でも、こうしていつも寄り添ってくれる人がいる。
「アキ?」
「ん…うん、ごめん。九州はどうだった?」
「あぁ、親父は案外元気そうだった。」
「そう、良かったぁ…!」
「アキのこと話したら、嬉しそうだった。ははっ」
「えぇ?私のこと…?」
なんて説明したのだろう。
だって、私は…。
「うん。特定の相手はいるよって」
「紹介してくれたの?」
「ん。だって今度は、一緒に行くだろ?九州。」
「…うんっ…」
嬉しさと、今自分が置かれている現状に、こみ上げるものがある。
「それで…なにがあった?」
「…っー」
「なんかあったろ?」
私は少しの沈黙の後で、昨日キョウちゃんと別れてから起こった事を1から説明した。
…
「マジでか………」
キョウちゃんは言葉を失っている。
「これからどうするのかって、ゆりちゃんに聞かれたけど…。私まだ、今すぐになにかを決断できるほど落ち着いてなくて」
「うん。……アキ、迎えに行こうか?」
「…ううん。…すっごく会いたいけど、今日は1人でいるね。明日も仕事があるし…」
「そっか…大丈夫か?眠れそう?」
「ん…。キョウちゃんの声聞けたから。それにもうすぐ、今の現場が終わる。そしたら、ゆっくり一緒に…いれるよね」
「うん。約束な。」
…
今夜はキョウちゃんも驚きを胸に眠るだろう。
彼に打ち明けたことで、私はいくらか気が楽になった。
だけど…このまま家族でなんて、いられるものなんだろうか。
明日が分からない。
なにも決められない…ーーー。