メランコリック・ウォール
第22章 家族
それから週が明けても、何事もなかったように私も、オサムも、そしてゆりちゃんやキョウちゃんも…平然を装って過ごしていた。
今週で、今の現場は終わる予定だ。
昨日の夕方、棟梁たちがやってきた。
現場が終わったら、やはり打ち上げで月の宮旅館に行くことになる…。
ゆりちゃんは参加者の名簿を確認しながら、心配そうに私に目配せした。
なるべくオサムと顔を合わさないようにしながらも、同じ屋根の下。どうしても会ってしまうことがある。
すれ違うときには、つい息を止めた。
朝夕の食卓は地獄のようだった。それはオサムも同じだろう。
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結局、キョウちゃんとは2人きりになるタイミングがないまま現場が終わり、その日事務所ではささやかな”お疲れ会”が開かれた。
とは言っても、社長である義父が親方とキョウちゃんに金一封を渡すだけという、実に簡素なものだった。
「いやぁ、本当にお疲れさんでした!来週からは、またぼちぼちいこうや」
義父が言い、2人は封筒を受け取った。
オサムはとっくに自室にこもっている。
…
明日は打ち上げの日だ。
夜、キョウちゃんに電話をかける。
慣れたもので、電話で話さないまま3日以上あくことは無くなっていた。
「明日はどうやって行く?車?」
「うん、ゆりちゃん乗せて行くつもり。キョウちゃんは?」
「なんか今回はオサムさんが親方と孫、乗せてくみたいでさ。」
「え…」
桜子ちゃんも来るんだ。
今回は名簿をちゃんと確認していなくて、知らなかった。
どういうつもりで来るんだろうか…。
「そんで俺、アキ迎えに行こうかなーって思ったんだけど」
「本当?いいの?」
「こちらこそ、アキが良ければだけど。事務の子も一緒に」
「わぁ、ゆりちゃんに伝えておくね。」
私たちは昼過ぎに会うことになり、ゆりちゃんには16時頃むかえに行くと伝えた。
久しぶりに、2人で会える。