メランコリック・ウォール
第22章 家族
翌日、私は早めの昼食を適当に済ませ、2人にも簡単なものを用意すると荷物を持って家を出た。
オサムが、親方と桜子ちゃんを乗せていく…?
何を考えているんだろう。
あんな場面を私に見られておいて、どうして平気なんだろうか。
…
自販機での待ち合わせは昼間だと目立つので、少し離れたコンビニで落ち合う。
駐車場にキョウちゃんの車を見つけ、駆け寄ると運転席から彼が微笑んだ。
ドアをあけ、助手席に乗り込む。
車はすぐに発進した。
「アキ。」
キョウちゃんが左手を差し出す。
ぎゅっと握り、彼の横顔をそっと見た。
「…大変だったな。」
「ううん…。」
「眠れた?」
「意外とね。」
「そっか」
「私ね…あの人が浮気をしてたこと自体がショックなわけじゃないの」
「…うん?」
「まさか桜子ちゃんと…っていうのが、すごく…びっくりで…」
「そうだな。」
「なんだかもう、なにも分からない。あの人がもともとどんな人だったかも、何考えてるのかも…」
「俺も、オサムさんがどうしたいのかイマイチ分かんないな。」
「どうしたいのか…」
「ん。ちょっとした火遊びだった…のか、アキと別れても良いと思ってるのか。…もし遊びだったなら、謝ってくるはずだろ」
「別れてもいいと、思ってる…ってこと?」
「いや、それは分かんないけど。謝罪もない、その上今日は一緒に旅館まで行くとか。謎だよ。嫁に見られておいて、そんな事するって…大切とは思えない。」
「うん……」
確かにそうだ。
私に謝罪をしないのは意地を張ってるに違いないが、それでもまだ桜子ちゃんとの関係を続けようと考えているならば…私たちはもう、家族とは言えない気がしてくる。
「キョウちゃん。家族って…なんだろう。」
「…アキはどう思ってる?自分の両親に対して」
「うーん…。いつも味方でいてくれて」
「うん」
「喧嘩しても、必ず仲直りできる。切っても切れない、絶対のつながり。それから…とっても大切に想ってるし、想われてる自信もある…。」