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メランコリック・ウォール

第25章 水族館で


事情を説明し、すぐに係の人が館内アナウンスをかけてくれる。


5分後、はぁはぁと息を切らして女性がやって来た。

「キョウちゃんっ…!!!」


…え?


私とキョウちゃんは目を見合わせた。


女性は男の子を抱きしめる。

「キョウちゃん、心配したでしょうっ!…良かった…」


なんとその男の子も、キョウちゃんと言うらしかった。
係の人の説明で母親が状況を知り、私たちに深々と頭を下げる。


バイバイ、と手を振る男の子に、「キョウちゃん、ばいばい」と挨拶をし、私たちは笑い合ってまた順路を進んだ。





「…キョウちゃんに抱っこされたら、良い景色だろうねぇ」


「アキも抱っこしてやるよ、ほら。」


腰に手を当て、抱き上げる素振りをする。


「ちょっとぉ、ふふっ、もう~…!」

「あははっ。いいの?しなくて」

「いいです(笑)」


「ふ~ん。んじゃ、帰ってからね。」


彼はいたずらな笑みを浮かべ、また優しく手を握った。


2階建ての広い館内をすべて見終わる頃には、時刻はもう13時。

フードコートで軽食をとり、キョウちゃんが煙草を吸っている間、トイレで化粧を直した。


ショーが始まるというアナウンスを聞き、私たちも屋外プールへと足を運ぶ。





20分間のショーは予想をはるかに超える面白さで、いつの間にか子供のようにはしゃいでいた。


イルカ、シャチ、アシカ、どの子もとっても可愛い。


「あぁ、楽しかった…!」

「めちゃくちゃ利口だな、みんな。」

「ほんと、すごいよねぇ。」


人混みが落ち着くのを待ってから、帰りのルートに戻る。


最後に大きなお土産屋さんがあり、可愛いグッズをあれもこれもと眺めてはお喋りした。


「可愛いなぁ。これとか…イルカだぁ」

「ボールペンなら、アキ仕事で使えるだろ?それ買ってこう。」


年甲斐もなくファンシーな雑貨。
それでも今日を思い出に残したくて、私は頷いた。


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