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メランコリック・ウォール

第26章 舌と指先


…ヒグラシが、耳に心地よい音色で鳴く。


公園の人影は少しずつ減り、私たちも車へ乗り込んだ。


結局、スマホで調べて出てきた地鶏のお店に行くことになり、胸が踊った。


「この地鶏って、キョウちゃんの地元のだよね。」

「そう。真っ黒になるまで燻したのが、地元ではよくお通しに出るよ。柚子胡椒と一緒に」

「へぇ?すごいね。私まだ食べたことないや。楽しみ~!」





雰囲気の良い入り口を入り、多少の賑わいを見せる店内へ入る。

カウンターとその向こうはガラスで仕切られ、地鶏を焼いている様子が見れる。


「すごい!ほんとに真っ黒だ!」

驚く私に微笑み、キョウちゃんはメニューを手渡してくれる。


気にしないで飲めと言う言葉に甘えて、ビールを1杯だけ飲んだ。


地元よりうまいかも、と笑う彼の太ももは、私から離れることはなかった。


「アキ、来月…誕生日だな。」

「うん…?あっ、なにも要らないからねぇ?!私も、なにもお祝い出来てないし…」


「だから、最高のプレゼントもらったって(笑)」

「だから、それは~~!っ…(笑)」


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お店を後にすると、キョウちゃんのアパートへ向かう。


この胸騒ぎは、期待か、不安か…ーー。





部屋に入り、すぐに彼がエアコンをつける。


「あっ、ボタンと裁縫道具もってきたよ。服ある?」

「お、マジで?さんきゅ。」


手渡されたシャツに、早速ボタンを縫い付けていく。


「ほお~…そうやって付けるんだ」

「キョウちゃん、家庭科の授業でたぁ?ふふ」

「全然覚えてない(笑)」



ほとんど使われていないように見える殺風景なキッチン。


一人暮らし用の冷蔵庫と、電子レンジ。

シンクの上に並ぶ、空き缶やペットボトル…ーーー。



「キョウちゃん、毎日外食…?」

「ああ。すこ家の牛丼な(笑)」


「たまには、しっかり栄養とってよぉ。私、作るから!」

「うわ、マジ。最高じゃん!」


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