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メランコリック・ウォール

第27章 悦楽


「おはよう。…えへへ」


何だか照れくさくて、意味もなく笑った。


「もうちょっと、こうしてたい。」

「ん…」


指を絡め合ったり、キスをしたり、思い切り抱きしめ合ったり。


時間など、止まればいいのに。


「よく眠れた?」

「うん。もうぐっすり。こんなに寝たのいつぶりかな…」



愛ある悦楽の後の、彼の腕の中は格別なんだ。

私を深い眠りに落として、落として…もう目が覚めなくてもいいとさえ思わせる。





やっぱり時間は止まってくれなかった。


シャワーを浴び、車に乗り込み、…ーーーそうして自宅に帰ってきた。


夏の終わりのじわりとした熱気で汗ばむ。

昨夜の記憶が、私の肌に鮮明に残っている。



「おかえり、アキちゃん。楽しめた?」

「あ、はい…とっても。これ、お土産です。」


水族館で買ったお菓子をテーブルに置く。


義父の顔を見ることが出来ず、私はそそくさと自室へ向かった。



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「汗臭いから。」


「いいのっ…」


ぎゅっと抱きつく私にキョウちゃんが笑う。


9月も終わりに近づき、暑さも少しずつ落ち着いてきた。


今日は久しぶりにオサムと義父が残業で、キョウちゃんを車まで見送れる。


たくさん汗をかいたあとの、少しベタつく首元が愛おしい。


彼は今日も、誰かに知られることを恐れるそぶりも見せず平然と私を抱き寄せた。

ペンキと煙草が混じる、男の匂い。



秋が、来る…ーーーーー








オサムは今日も帰らない。


最近では週に2~3回は深夜に帰宅するし、時折朝帰りもある。

若い女の匂いをまとって平気で家の中をうろつくオサムに、息を止める毎日。


気付いているであろう義父も、今のところなにも言う様子はない。


「おい、掃除しとけよ!」


またそれか。

なぜそんなにも”自分が指図をする”姿勢なのか。


「してるわよ。毎日。いちいち指図しないで」


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