メランコリック・ウォール
第4章 3人での親睦会
「あとは若いもんだけで行ってこいや。」
片付けが終わると、親方はそう言ってお札を何枚かクシャッと森山さんに手渡した。
「桜子、お前は帰れよ」
「えぇ~嫌だよぉ。っていうかおじいちゃんは?」
「俺ァ、椎名んとこで晩酌だ」
「じゃあ私も森山さんたちと飲みに行く~♪」
「だ、め、だ!!会社の飲み会なんだよ、お前が居たら仕事の話が出来んだろが」
仕事の話なんてほとんどしないけど…と、私たちはこっそり笑った。
腑に落ちない様子の桜子ちゃんはしぶしぶ帰り、親方、義父、オサムも肩をならべて帰っていった。
「さぁて、どこ行きます?」
わくわくした様子のゆりちゃんは、足軽に歩き出した。
「このへんじゃ、選ぶほどないねぇ…あ、でも森山さんはこのへんで飲むことあまり無いんじゃない?」
「ん。ほとんど無い。」
「家はどのへんなんですかぁ?」
適当な会話をしながらメイン通りに向かって歩いた。
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「ここ久しぶりに来ました~!アキさんは?」
「私も、冬にゆりちゃんと来た以来だよぉ」
私たち3人は小さな居酒屋に来ていた。
ここから会社ウォール・シイナまでは歩いて10分ちょっとだが、森山さんは車で20分の距離に住んでいるらしかった。
「ゆりちゃん、今日は泊まる?」
彼女は今までも飲み会などで数回、私の部屋に泊まったことがある。
「いいんですか?わぁ、久しぶりだなぁアキさんのお部屋♪」
それから3人で改めて乾杯して、仕事の話も少しした。
「大変なんですよ、真夏と真冬の現場は…。ね?アキさん」
「ん…私たち慣れてないもんね。現場で働く人はホントに凄いよね」
「女の人には確かにキツいすね。これから暑いし…また現場あるんすか?」
いつのまにか敬語に戻っている森山さんが言う。
「次は梅雨の時期にありますよね。」
「そうそう。夏に大きな現場が入るから、その前にあるんだった」
「あぁ、あそこに建つマンションすよね」