メランコリック・ウォール
第4章 3人での親睦会
夏から始まる大きな現場の話をしたあと、だいぶお酒が進んだゆりちゃんは恋バナを始めた。
「森山さんって彼女とかいないんですかぁ?」
私はなんとなく気まずくなってトイレに立った。
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また、顔が赤くなっている。
この体質で得をすることもあったけれど、今はただ恥ずかしい。
席に戻ると、ゆりちゃんは先ほどより更に酔った様子で私を見た。
「アキさぁん。森山さん、彼女と別れてもうすぐ3年だって。意外ですよねぇ~」
…ゲイじゃないんだ。
まず最初に思ったのがそれだった。
「そ、そうなんだぁ。モテそうなのにね。」
何気なく答えたけれど、ゆりちゃんは同意した。
「ですよねぇ。色んな人と遊んでそう~」
「俺、どういう奴に見えてんの…(笑)」
確かに、今日の花見ではなんとなく女性に慣れているような印象もあった。
だけど、これまでの彼の言動を考えると…分からないなぁ。すごくクールで近寄りがたかったし。
「アキさん?」
「あっ、うん、なあに?」
「森山さんね、年下がニガテなんですって。あの子、泣きますね(笑)」
桜子ちゃんのことを言っているとすぐに分かり、私も少し笑った。
「ゆりちゃん、嬉しそうなのバレてる(笑)」
「アキさんだって笑ってますよぉ~!」
にこやかに私たちのやり取りを見つめる森山さんの目は、お酒のせいか少しぼんやりしていた。
「桜子ちゃんね、ちょっとワガママだけど…悪い子じゃないんだよ?でもま、ゆりちゃんと合わないのは確かだ(笑)」
「あれがですかぁ?どう見ても問題児ですよ。すっごいうざい!ねぇ?森山さん!」
「確かに」
くいっと口角を上げて笑う彼は、そう言ってから何とは無しに私を見た。
バチッと目が合い、一瞬たじろぐ。
「あぁ…私…ちょっと休憩…します」
急にゆりちゃんの電池が切れたようで、彼女はテーブルに突っ伏してしまった。
すやすやと眠り始めるまで、たった数秒の出来事だった。