メランコリック・ウォール
第31章 遠くに
その日も仕事は忙しく、残業となった。
4人が帰ってきたのは19時過ぎで、明日の確認をするとあっという間にそれぞれが散った。
[一回、家帰ってから来る。20時過ぎにコンビニで]
キョウちゃんからのメールを確認し、私は急いでシャワーを済ませた。
…
今朝、早起きして作っておいた惣菜を丁寧にタッパーへ詰める。
家を出る頃、オサムは自室。義父は居間でテレビを見ながら晩酌していた。
パタパタと出ていく物音で感づいたであろう義父からは、出かけるの?という声掛けさえ無くなっていた。
何かを察したような表情で私を見送る。
風呂に入ったのに化粧をし、紙袋に惣菜を詰めてイブの夜に出かけていく息子の嫁。
義父は今、何を思うのだろう。
…
「おまたせ…っ!早かったね」
「急いで来たから。」
彼の髪が濡れている。
急いでシャワーを浴びて出てきたのだろう。
「ごめんね。忙しくて疲れてるのに、わがまま言って。」
「え?アキ、なんか言ったっけ?俺、アキにわがまま言ってほしいなー。ふふっ」
「んもう。イブに会いたいって言ったの私だから…」
「俺も会いたかったからそれはワガママじゃない。…さ、どこ行く?」
「海のそばで車とめて…」
「やらしいことする?(笑)」
「ち、ちがうよぉっ!…食べるもの、作ってきたの。お腹すいてるよね?」
「おぉ~マジか。最高。よし!行こう。」
それから高速道路に乗り、2ヶ月前…私の誕生日にも来た海沿いに車を停めた。
月のあかりでじゅうぶんなほど、今夜の空は澄んでいる。
「これと、…これと…」
ダッシュボードの上にタッパーを広げ、作ってきたフライドチキンやローストビーフ、生ハムサラダなどを見てキョウちゃんが声をあげた。
「すげえ~!!めちゃくちゃクリスマスだな。うまそう!」
「食べて食べて。口に合うかなぁ」
彼は生ハムを口に放り込み、ガーリックトーストを喰む。