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メランコリック・ウォール

第31章 遠くに


「30日に出発。んで年明けの5日にこっち帰ってくる感じ」

「うん、分かった!」


「…本当にいいのか?家…」


「毎年、お正月はそれぞれバラバラに過ごしているし。大丈夫」


年末年始、忘年会だ新年会だと、なにかにつけてオサムと義父は外へ出ていく。


家にいる間と言えば居間でビールを飲み、テレビを見てうたた寝するくらいのものだ。


私は毎年、テレビでカウントダウンを見届けたあとは、いつもどおりに眠りにつき、年明け3日か4日にゆりちゃんと初詣に行くのがここ数年の定番だった。


…心がウキウキと踊っている。

あと6日後には、私はこの人と飛行機に乗っているんだ。



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翌日、クリスマス当日は何も変わったことがないまま普通に過ぎていった。


気が早いけれど、私はもうキャリーケースを引っ張り出して旅の支度を始めていた。

わきのポケットには、大切に2枚のチケットがしまわれている。




夕食時、オサムがいないのを見計らって義父に切り出した。


「私、今年のお正月休みは旅行に行こうと思っていて…」


「お?そうか。どこへ?」


「え…っと、九州方面に…」


戸惑いを見せてはならない。
私はなるべく平然を装った。


「ほう。こっちより暖かいといいねぇ。楽しんでおいで」


おそらく怪しまれてはいないようだが、義父は知っていても知らん顔が出来る人だ。分からない。





さらに翌日、めずらしくオサムが声をかけてきた。


「なんだ、正月に九州行くって?」

「あぁ…うん。」

「…」

「何?」


「誰とだ。」

「は?…関係ないでしょ。」


「…メシはどうすんだ。」


「知らないわよ、どうせ毎年ろくに家にいないじゃない。そのくらい自分で何とかしてよ」


いつもどおり舌打ちをして去っていくオサムは、最近洋服の趣味が変わったようだ。


それにしても、何故この人はいつも私に”不快”の雨を降らせてくるのだろうか。


好きにしてくれていいのだから、私のことも放っておいてくれたら良いのに。


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