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メランコリック・ウォール

第35章 彼の地元


「俺はアキが好き。アキは俺が好き。…今は、とりあえずそれでいい。」

「…うんっ」


その言葉で、少し気が楽になった。


この人が好きなのは変えられない事実だ。


好きな人とは、この先も一緒に居たいと望んでしまうもの。


…ーー私は自分を正当化するように思い直した。


今は、これで…ーーー



「初詣いこう!何食いたい?」

「露店?」

「うん。すんげ沢山あるよ」


「わぁ~!楽しみ。チュロスあるかなぁ?イカ焼きもいいなぁ…」

「めでたいので、欲しいもの全部買ってあげましょう(笑)」


キョウちゃんはおどけながら車のカギを開けた。


もうすぐ神社に着くというあたりから、長い渋滞が発生している。


「毎年こんくらい混むから慣れてるけど、アキは渋滞イヤ?」

「ううん。いっぱいお喋りできるし嬉しい!」


ゆっくりゆっくりと前進しながら、たくさん話をした。



「…お父様、私のこと知ったらガッカリする、よね…」


「んー。どんな反応するか俺にも分かんないけどね。」


「うん…」


お父様やマサエさんを裏切っている気持ちが拭えない。


キョウちゃんは私の頭をポンと叩き、大丈夫、とつぶやいた。





ようやく駐車場に車を停めることができ、さっそく参道へ足を運ぶ。


「うわぁ、たくさん!」

ずらりと立ち並ぶ露店にワクワクしてくる。


また長い行列を経て、やっとお参りが出来る。

小銭を投げ入れ、パンパンと柏手を打つ。


ーーー願わくば…これからの人生、この人と共に過ごせますように…ーーー


極めて利己的な願い事をし、ふと隣を見るとキョウちゃんはまだ目を閉じ、落ち着いた表情で佇んでいた。


こんな時なのに私はその整った横顔に見惚れ、今を一緒に過ごせていることが幸せだという想いが深部から湧き上がる。





お参りを終え、お守りを売っている場所に目をやった。


「あれ、可愛い~」


交通安全のお守りに、小さな亀のマスコットが付いている。


「ほんとだ。買う?」


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