メランコリック・ウォール
第36章 生きたいように
もどかしい思いを抱いたまますっかり夜になり、お父様はお風呂へ。
マサエさんは注文してあったオードブルを取りに出かけて行った。
「やっと2人になれた…」
「ふふっ。心配だった?」
「そりゃあ、もう…。それで、言ったの?お父様に…」
「……言ったよ。」
「なんて?」
「アキが結婚してる事と、それでも俺はどうしてもアキと居たい事」
「……ーっ…。私、お父様に謝らなくちゃ。マサエさんにも…」
「なにをだよ?結婚しててごめんなさいって?」
「えぇと…自分の身もわきまえずに、こうしてキョウちゃんと交際してて…とか…」
「ふっ。いいよそんなのは。もともと手を出したのは俺で、アキの家庭内がうまくいってないって話もしたし。」
「お父様、なんて…?」
「お前が家庭壊したのかって最初は怒ってた。けど、それならきちんと責任取れって。」
「…。キョウちゃんは悪くない。もともとうちはうまくいってなかったし、私がキョウちゃんに…ーーっん」
唇を塞がれ、深く舌が入ってきた。
「理屈とかそういうのはいい。俺はアキが好きで、大事で、一緒にいたい。」
「…うん」
「本当に大事なら…アキを抱いたりしないで、家庭がうまくいくように願うのが普通かもしれない。だけど俺は…。アキとこういう関係になったこと、何一つ後悔してない。…アキは?」
「後悔なんて…少しもしてない。キョウちゃんが好き。これからも一緒にいたいよ…」
「うん。…親父は、俺らの問題だから今は何も言わないって。責任はちゃんと取れとか、アキのこと大事にしろとか、そればっかだったよ。」
「そう…。なんだか申し訳なくなっちゃう…」
キョウちゃんは私をそっと抱き寄せ、背中を上下に大きく撫でてくれる。
「俺も、親父も、大丈夫。アキは自分が生きたいように進めばいい。」
私の、生きたいように…ーー
自分の歩みたい道はどこへ向いているのか、考えずとも分かっている。