メランコリック・ウォール
第38章 朝採れレモン
「アキさん、また遊びに来てね。夏に来ればジェットスキー出来るし、奥さんも紹介するよ」
夕方解散し、森山家へ帰った。
釣れた魚をキョウちゃんがさばき、私は歓声をあげた。
お刺身や唐揚げをはしゃぎながら作り、完成した頃にお父様とマサエさんが帰ってきた。
「あらぁ!釣りに行ったの?」
「アジか、いいな」
2人が買ってきてくれたお土産や釣れた魚を皆でつつき、夜が更けていった。
「あっという間ねぇ、本当に…。」
マサエさんが嘆き、「明日行くんだろ?」とお父様も言った。
「うん。まぁまた、盆休みにでも帰るわ」
「うむ。」
…
翌朝、ゆっくり起床するとマサエさんが豪華な朝ごはんを作って待っていた。
「すごい!ありがとうございます。」
「最後の朝だからねぇ!あるもんしか、ないけど。アハハ!」
食べきれないほどの家庭料理は私の心も満たし、マサエさんがお母さんだったらとっても良いのにと思った。
身支度を済ませ、出発する時になるとお父様とマサエさんは玄関先まで見送りに出てくれた。
「それじゃ、マサエさん。またしばらく親父のこと頼みます。」
「はいはい、大丈夫よ。お盆まで長いわねぇ、寂しくなるワァ」
私が欲しいと言ったレモンが紙袋いっぱいに詰まっている。
「朝採れだ。足りなけりゃ、また送ってやっから。」
「ありがとうございます…!どうも、お世話になりました。本当に…」
「また来い」
別れ際に見たお父様の顔は、せつなげな微笑みだった。
…
美味しい魚介類をたくさん食べたので、お昼ごはんはお好み焼きを食べに行った。
「夜はまた魚だからな。飽きるだろ(笑)」
「ううん、お魚だいすき。海が近いのってやっぱり良いよね。」
「そっか、なら良かった。」
午後になり、宿に到着すると私はわぁと声をあげた。
とっても素敵な木造の本館から長い渡り廊下が伸び、いくつかの個室へと繋がっている。