メランコリック・ウォール
第5章 不純と不信
私もいったん部屋で横になると、思い出さないように家事で気を紛らわしていた昨夜の出来事が瞬時に蘇る。
森山さんと手を繋いじゃった…しかも、家のすぐそばで。
既婚者の私には不純な事なのに、なんでこうも嬉しくなってしまうんだろう。
目を閉じ、唇に触れてみた。
気のせいかな…森山さん、私の唇を…撫でたような…ーーー
「っ……ーー」
久しく身体が疼く。
森山さんの手や、視線…思いだすだけで深部がきゅうっとする。
太ももをなぞり、そっと下着に触れるとそこはもうすでに湿っていた。
私…森山さんのこと考えながらなんて事してるの……ーーー
「ん…」
「はぁっ…ア…っ…」
長い間触れられていなかった私の秘部は、彼のことを思うと蜜を溢れさせ悦んだ。
ーーー「おい、アキ!」
廊下の向こうからオサムの声が響き、私はハッとした。
とろとろになった下半身をそのままに、急いで洋服を整えると廊下へ出た。
出かけるというオサムに階段の掃除をしておくように言われ、ため息が出る。
自分の部屋は汚いくせに、玄関だ階段だとなにかと掃除を要求するオサム。
言われなくても定期的に掃除はしているのに、わざわざ指示されるのが無性に腹立たしい。
浮かない気持ちで階段に掃除機をかけていると、隅の方に
ボタンがひとつ落ちている。
「…?」
作業着ばかりのうちの男たちのものでは無さそうだし、私のものでもない。もしかして、森山さんのものだろうか。
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ついでにオサムの部屋にも掃除機をかける。
本当に汚い部屋だ。
生まれてから一度も家を出ること無く、両親の元でぬくぬく育ったオサムの汗がこの部屋中に染み付いているような感覚に陥る。
40歳の男はこんなにも加齢臭が漂うものなのか。
黄ばんだ枕を見て見ぬ振りしながら、掃除機をちゃぶ台の下にもぐらせる。
”ガシャガシャッ…ーーー”
覗き込むと……