メランコリック・ウォール
第5章 不純と不信
「萌え萌え~童顔!現役女子大生がついにAVデビュー」
「可愛い女の子のオナニーを盗み撮りしちゃいました」
「嫌なのに気持ちよくなっちゃうよ…痴漢に溺れる優等生」
「新米ナースのえっちなご奉仕」
……驚いたためかなぜか口に出して読んでしまい、それから裏面をまじまじと見た。
どれも10代に見える、若くて可愛い子のあらわな姿が写し出されている。
オサムって若い子が好きなんだ、知らなかった…。
思えばセックスどころかスキンシップも何年もしていないし、夫の性的な趣味なんて知る由もない。
いや、こんな趣味だから私に興味がなくなったのかもしれない。
いずれにしても”セックスレスのきっかけ”は遠い昔の出来事で、追求したくもなかった。
「……」
嫌味のつもりはないけれど、それらのDVDを綺麗に整頓してちゃぶ台の下に置く。
なんだか気持ちが悪くて、ゴミ箱の回収はしなかった。
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明くる日、休みも終わり今日からまた通常通りの業務がある。
まだ誰も居ない事務所で、私はそわそわしていた。
森山さんとの出来事が頭を駆け巡り、どういう態度をとればいいのか分からず悶々としていた。
カラカラカラッ…ーーー
戸が開き、そこには森山さんの姿があった。
「あ、おはよう」
心臓が跳ねたけれど、平静を装って言った。
「おはよ。熱、下がった?」
笑っている…。
私はどこかホッとして、すぐにお茶を淹れる準備にかかる。
「風邪ッぴきみたいな扱い~!(笑)」
彼はいつものように古びたソファに座り、煙草に火を付けた。
気張らなくても、ごく自然に接してくれる。よかった…。
「はい、どうぞ」
「あ。どうも」
熱いお茶をすすり、ふぅーっと煙を吐くと目を閉じた。
そんな彼を横目に、私はデスクの上の書類を整理する。
「森山さん、平気?寝不足?」
「いや、めっちゃ寝た」
「そうなの、それは良かった。ふふっ」
「…アキさんは?大丈夫?」
「ん?なにがー?」
「疲れてない?」