メランコリック・ウォール
第39章 決断
「私、どのみち夫とは今後の人生もずっと一緒になんて考えられなくて、」
「そりゃそうです」
「でも、私が別れようって言っても一筋縄じゃいかないでしょう?多分」
「そうですね…素直に応じるとは考えにくいような」
「それでキョウちゃんは、すべて正直親方に話そうって」
「マジですか…」
「うん。確かにそれで私は夫と別れやすくなると思うんだけどね…、」
「親方、森山さんのことすごく可愛がってますもんね。味方についてくれる可能性もありますね」
「だけど…会社や仕事にどう影響してくるか予想がつかない。とんでもないことを始めようとしてるんじゃないかって、ドキドキする。すっごく迷惑な話よね…」
ゆりちゃんは数秒の沈黙のあと、「少しだけ時間ください」と言い、ビールをぐびっと飲み込んだ。
一点を見つめながら数分、やがて自分の問答に納得したようにうなずいた。
「正直に言います。」
「うん。」
私はいたって真面目に彼女を見つめた。
「アキさんが、オサムさんと別れるのは賛成です。…それで、アキさんが別れを切り出したとしても、オサムさんは応じないとも思います。」
「…うん。」
「もしそうなったとしたら、結局すごく揉めると思うんですよ。社長や親方も巻き込むことになると思います。最悪な形で、オサムさんとあの子の関係もあきらかになってしまうかもしれない」
私はうんうんと相槌を打ち、さらに言葉を待った。
「内輪の揉め事の最中に親方にバレれば、ウォールシイナも駄目になってしまい兼ねないですよね」
「そうだね…」
「なので、先にきちんと親方に事情を話すのは逆に名案なのかもしれないなって。怒るかもしれませんけど、そのあたりは誠意の問題もあるよなぁって思うんです。」
「なるほど…」
「こそこそ隠されてた結果知ってしまうより、しっかり誠意をもって話されれば最悪の事態は避けられるのかなぁって」
「ん…」