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メランコリック・ウォール

第40章 親方への告白


本心なのか私に対するフォローなのか定かではなくても、その言葉は私に寄り添ってくれた。


「すべてを隠したまま、なんとなくで丸く収まる話じゃないですもんね…。」


「そうだよね。……親方に、夫と桜子ちゃんの関係を言うのは最終手段だと思ってる。言っても親方はつらいだけだから…。知らずにいたほうが良いこともあるよね」


「それはそうですね。」


「私は夫と別れたいこと。キョウちゃんとの関係があること…それをまずは伝えなくちゃ」







2時間ほど経ち、私もゆりちゃんもすっかり顔が赤らんでいる。


「前にも言いましたけどね、私はっ!アキさんの味方です!」

「ふふっ!ありがとう。」


嵐の前の、つかの間の談笑。

明日が終わってしまえば、その時はやってくる。
親方はどんな反応をするだろうか。

その後、義父やオサムはどんな顔をするだろう。



戦いが始まる…ーーー。



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翌日、私はしばらく留守にしていた自宅の掃除をしていた。

台所や居間の掃除が終わると、ゴミ袋を何枚も持って自室へ向かう。


がらりと押し入れをひらき、洋服を次々と取り出してはゴミ袋へと詰めた。

それからバックや文具、部屋中の何もかもを整理した。


出ていくことを思うと、必要なものは案外少ない。
ただでさえ、一般的な30代の女性より洋服は少ないほうだと思う。アクセサリーなんてほとんど持っていない。


「私ってこんなに身軽だったんだなぁ…」


最終的に大きなゴミ袋3つがいっぱいになり、それを捨てるため外へ出る。

途中、義父のいる居間を通ると声をかけられた。


「大掃除かい?」

「ええ、まぁ…あはは…」




その夜、キョウちゃんへ電話をかけた。


「明日、親方に時間もらえるよう言っておく。アキ、仕事終わってから出れるか?」

「うん、大丈夫。」

「ん…」


「キョウちゃん。…」

「怖い?」

「少し…。でも、もうこのままの生活はしたくない。後ろ指さされても、前に進みたい」

「うん。俺も。」


互いの気持ちを確認し、床に就いた。


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