メランコリック・ウォール
第6章 長電話
「じゃ、ドライブはまた今度…」
「…うん。」
おやすみなさい、と電話を切り、彼の微笑みを思い浮かべて眠った。
いつしか、今日オサムに言われたことなど忘れられていた。
どうして森山さんはこんなに優しくしてくれるのだろう。
変な期待をしてしまいそうになる…ー。
仕事以外であんなに森山さんと喋ったのは初めてだし、最近友達ともあんなふうに長く話をしていない。楽しかったな…。
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数日後、電話対応を終えたゆりちゃんが慌てて私に言う。
「アキさん、来週の現場の日、税理士さんが来るみたいです~…」
「えっ。よりによってその日?…困った。」
「はい…どうしましょう…」
「ん~…。よし、仕方ないから私が現場行く!ゆりちゃんはここで税理士さんの対応してくれる?」
「えっ…でも現場に1人じゃ大変ですよ!!なんとか違う日に出来ませんかねぇ…」
マンションのオーナーと会い、一緒に現場を視察して、それから施工前である現状の写真撮影をしてくるのが任務だ。
書類やカメラで荷物がかさばるので、いつもはゆりちゃんと2人で現場入りしていた。
「ううん、大丈夫。なんとかなる!」
「えぇ…アキさん、無理はダメですよお…」
「心配しないで。あ、税理士さんに渡してほしいものがね…ーー」
こうして、現場へは私1人で出向く事になった。
大丈夫とは言ったものの、不安が残る…。
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その日の朝、いつもどおり作業員は仕事へ出かけていった。
お昼は近所のお蕎麦屋さんで出前を取ってゆりちゃんと一緒に昼食を済ませ、私は現場へ行く準備の最終チェックをした。
「アキさん、本当に大丈夫ですか?心配です…」
「大丈夫、大丈夫!」
午後、私は重い荷物を持ってタクシーをつかまえ、駅へ向かった。
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オーナーが去り、写真撮影をする頃には日が暮れ始めていた。
広い現場だから大変だ…なんとか暗くなる前に終わらせなきゃ。
ーーー結局、すべて終える頃には18時を過ぎていた。