メランコリック・ウォール
第7章 首筋の汗
「ううん、…平気」
私は改めて背筋を伸ばすと、前を向いた。
「ん」
森山さんから渡されたレジ袋の中には、栄養ドリンクとお菓子が入っていた。
「あ…くれるの?ありがとう。ごめんね、なんかいろいろ…」
彼は自分に買ってきた缶コーヒーをあけ、ごくりと飲み込んだ。
「俺、どうせ暇だから(笑)マジで気にしないで」
車が発進する。
ハンドルを握る森山さんの大きな手が、胸をときめかせた。
「…森山さんってさ」
「うん?」
「どうしてそんなに私に優しくしてくれるの…??」
「やけに単刀直入に聞くね」
クククッと笑った森山さんは、そのあと数分間黙ってしまった。
やがて赤信号で停止すると、やっと口を開いた。
「…ほっとけないんだよね。アキさん。」
「…え?」
すぐに信号は青に変わり、車が動き出した。
「無理してるじゃん、よく」
「そ、そうかなぁ」
「文句も言わずにさぁ。俺なら無理」
「…それで、同情で優しくしてくれてるの?」
「ま、それもある」
またイジワルに笑う彼に、胸が切なく疼く。
「そういうことかぁ…あはは」
「アキさん」
「なあにー」
「今思ってること、正直に言ってみ?」
「えー?なにそれ(笑)」
「いいから。超ねむい~とかさぁ、本当はこうしたいのにーとか、…死ねー!!とかでもいいよ(笑)」
「ふふっ。可笑しい~。うーん…そうだなぁ………足がすっごく痛い。」
「足?(笑)」
「うん…」
「それ脱いじゃえば?少しは楽っしょ」
「う……うーん…」
そんなにリラックスしちゃって良いのだろうか。
でも、森山さんが”ほら”と促す言葉に甘えて、私はヒールを脱いだ。
「あ~、らく…」
「うん、それは良かった」
満足そうに微笑む彼は、慣れた手付きでカーブを曲がる。
「ほかには?」