メランコリック・ウォール
第9章 見つかった痕
ほとんどの人が集まり、最後の方で親方と一緒に森山さんもやってきた。
すぐに目が合い、穏やかな表情でアイコンタクトをとる。
背の高い彼の浴衣姿は、とても色っぽくて素敵だ…。
「あ!森山さぁん♪」
彼がこちらに歩いてくる途中で、さっそく桜子ちゃんに捕まってしまった。
森山さんは私たちの方を指差し、なにかを話している。
だが、結局丸め込まれた様子で桜子ちゃんの隣へ座った。
「あ~あ…始まりましたね」
「あはは…さすがだねえ」
桜子ちゃんが彼にベタベタするのはいつもの事だし、気にしても仕方ない。
せっかくなんだから、ゆりちゃんと目一杯楽しもう…ーー。
…
大きな宴会場には総勢37名がずらっと並び、代表者の挨拶で乾杯の音頭が取られた。
「「「乾杯!!」」」
「ーー…お待ちかねのコンパニオンさんも来ていますんで。どうぞー!」
すぐに、ぞろぞろと女性が10名ほど入ってきた。
皆、白い上下セットのスーツを来ているが、スカートは短い。
「本日は、お招きいただきありがとうございます。コンパニオン司(つかさ)でございます。皆様のご宴会がより一層よいものとなるよう、精一杯お手伝いさせていただきます。どうぞよろしく、」
「「「「お願い致します」」」」
全員そろって三指をつき深々と頭を下げると、会場からは拍手喝采だった。
「こんなにたくさん来るんですね」
「すごいねえ…」
「私たち、今夜はなにもお世話しなくて良さそうですね(笑)ラッキ~♪」
ゆりちゃんはビールを飲み干し、それを見て私も笑った。
「皆さんはこれから現場入りで大変になるけど…、私は変わらない仕事を続けてくだけなんで、こういう機会はボーナスみたいなもんです(笑)」
「ふふっ。そうだね、今日は楽しんじゃお♪お料理も美味しいね!」
桜子ちゃんは当然のごとく、私たちのことなど気に留める様子もない。
まわりの男たちに媚を売るが、やはり森山さんのそばを離れない。