メランコリック・ウォール
第10章 キスの理由
少し遠くに座る森山さんを見る。
初めはクールに見えていた彼だけど、案外まわりのおじさんたちとうまくやっているようだった。
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1時間も経つと、みんな席を移動したり大声を出して騒ぎ出す。
私とゆりちゃんもお腹がふくれ、ひたすらお酒を飲んでお喋りを続けていた。
「アキさんの好みのタイプって、今までちゃんと聞いたことないです。どんな人が好みなんですか?」
「え?うーん……」
考えても、今は森山さんしか浮かんでこない。
「ゆりちゃん、もしかしてお風呂でのこと…すごく気になってる?」
「えへへっ!バレましたか!”隠し事しないでとは言いません” な~んてカッコつけちゃいましたけど、やっぱり気になりますよう。女はやっぱり恋バナが好きです!!アキさんもそうでしょ??」
「ふふっ。あはははっ」
お酒の影響もあり、私は久しぶりに思い切り笑った。
「アキさぁん?ごまかそうとしてますぅ?!」
「はははっ…ー、はぁ、笑った笑った。なんだか楽しくなってきちゃって。そうだね…恋バナはいくつになっても盛り上がるよね」
「ですよね?私はしばらく恋愛してないけど…アキさんは、…ね?」
「恋愛って言えるのかな…考えたことなかったなぁ」
「どんな人なんですか?」
少し小声になったゆりちゃんが問いかける。
「うーんとね…背が高い人だよ」
「えぇ?!私にくれる情報それだけですかぁ?!」
そこでまた大笑いすると、私はどこまで言っていいものか少し考えた。
「ん…歳が近い人なの。」
「ほほう。イケメンですか?」
「う、うーん…私はカッコいいと思うけど」
「へぇ~!!見てみたいなぁ。アキさんを落とした男かぁ…!」
「なに言ってるの~(笑)そんな、すごい関係じゃないんだよ?そういう関係じゃないから…」
「え?そうなんですか?でも…えぇ??」
お風呂で私に付いたキスマークを見てしまったゆりちゃんは、混乱した様子だった。