メランコリック・ウォール
第10章 キスの理由
「どうやって知り合ったんですか?あっ、もしかして同じ学校だった人と再会して、とか??」
「違うよぉ~、」
言ってから、どう説明しようかと黙ってしまった。
仕事関係と言えばゆりちゃんはほとんど把握しているし、真っ赤な嘘をつくのも何だか気が引ける。
「じゃ、どんな出会いで…?」
「うぅんと……なんていうか…ーー」
その時、皆の盛り上がる声が一層大きくなった。
とっさに2人で目をやると、オサムを含むおじさん数人とコンパニオンがワイワイと盛り上がっていた。
「うわぁ。やってますねぇ」
「ほんと、しょうがない人…」
「オサムさん、楽しそうですよ(笑)」
「…あの人、若い子がだ~いすきなのよっ。」
私はあきれた口調で言った。
オサムはコンパニオンの肩を寄せ、上機嫌だ。
「結婚した時、主人がもうすぐ30歳で私が21歳。それだけでも、若い奥さんもらったねぇ~って感じじゃない?」
「そうですね、はい」
「今でもあの頃と変わらないのよヤツは。ハタチそこそこの女の子がやめらんないのね…」
嘲笑気味に言うと、ゆりちゃんも少し呆れた。
「はぁ、なるほど。でも、浮気とかは無い…ですよね?」
「どうかなぁ。よく香水の匂いプンプンさせて帰ってくるけどね(笑)」
「えぇ!それでアキさん、怒らないんですか?」
「ぜ~んぜん。よそに女がいてもどうでもいいなぁ」
「…分かりました!」
「?」
「アキさんには、その…さっき言ってた、背の高いイケメンがいるから…ですね?ふふふ」
「そ、そういうわけじゃないよぉ~。前からだよ(笑)」
「またまたぁ~!!」
2人で肩をつつき合ってじゃれていると、曽根さんがやってきた。
「おい、お嬢さんたち~!こっち来てみんなで飲もうや。そんな端っこにいないで、ほらほら」
半ば強引に席を移動させられる。
そこでは現場関係の人たち数人が、輪になってくっちゃべっていた。
その輪の横には森山さんもいる。