メランコリック・ウォール
第10章 キスの理由
「ちょっとぉ~?森山さぁん、私の相手もしてよー!」
桜子ちゃんが可愛く言う。
森山さんは桜子ちゃんを見ることもなく、ぐびぐびとビールを飲む。
「桜子ちゃん、おじさんが相手してあげようか。へっへっへ!」
関係者の1人が言うと、桜子ちゃんはまた可愛く答えた。
「森山さんじゃなきゃ、いやで~す♪ふふふ」
「なんだよつれねぇなあ、森山の一人勝ちか~~!!」
ゲラゲラと笑いが起こり、私も愛想笑いをした。
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開始から2時間が経ち、森山さんたちとも離れ私はぶらぶらと挨拶回りをしていた。
「そろそろ一次会は終わりだぞ~~!!コンパニオンさんはここまでだからよ、延長する奴は自腹な~~(笑)はっはっは!」
代表者が言い、私は締めの挨拶が始まる前に…とトイレへ立った。
廊下へ出ると、なんだか脂っこい宴会場の空気からサッと清潔なものに変わる。
体がふわふわして気持ちが良い。
…
トイレから出て宴会場へ戻る途中、少し影になった曲がり角に森山さんの後ろ姿が見えた。
「森山さ~……ん………っ…ーーー?!」
呼びながら近づくと、森山さんの前には桜子ちゃんがいた…ーーーー。
壁により掛かる森山さんと、その彼に甘える様子で、なんだか迫っているような桜子ちゃんの姿…。
2人の距離はすごく近かった。
今にも、唇同士が触れそうなほど…
2人と目が合ったが、誰かが一言でも発する前に私は小走りで去った。
…なに、今の…ーーーーー。
宴会場を通り過ぎ、廊下の一番端まで来てしまった。
「はぁ、…はぁ……」
見てしまった。
2人は何していたんだろう、これから何を……。