メランコリック・ウォール
第11章 金魚
「そんなことっ…」
「何?」
「…す…好き……」
ぽんと頭に手をのせ、くしゃっと撫でられた。
「じゃあアキさん、俺と結婚してよ」
いたずらな笑みで言われ、私は黙ってしまった。
オサムと別れることが出来たら、どんなにいいだろうか。
「なんか飲む?アキさん、顔真っ赤。」
浴衣の袖からチャリンと小銭を取り出しながら森山さんは言った。
「ん…」
確かに、少し飲みすぎたかもしれない。顔がすごく熱い。
自販機に目をやり、私が「アイスがいいな…」と言うと森山さんはプッと笑った。
「いいよ。どれ?」
イチゴのアイスを指差すと、”押しな”と促される。
「ありがとう」
「あ!森山さぁん。なんで行っちゃうのお~~」
買ってもらったイチゴのアイスを受け取った瞬間、桜子ちゃんの声が響いた。
「あれ?アキさん顔、真っ赤!だいじょぶですかあ?」
「あ、う、うん!大丈夫…っ」
「っていうか森山さん、やっぱりアキさん追いかけてたんだぁ~」
「うん。」
森山さんは平然と答える。
「しかも2人でアイスぅ?…もしかして2人、なんかあったり…?」
「ま、まさか」
私が言うと桜子ちゃんは疑う様子もなく答えた。
「そうですよねぇ♪そんなわけないか♪」
ここで桜子ちゃんに知られては、非常にまずい。
関係者全員に知れ渡り、大問題になるだろう。
「もう最後の挨拶おわってましたよぉ。二次会いきましょーよ~♪」
それを聞くと、私は途端にゆりちゃんのことが気になった。
「ゆりちゃん大丈夫かなぁ」
「様子見に行こう」
森山さんが私の背中をぽんと叩くと、桜子ちゃんは一瞬顔が引きつった。
…
宴会場には残り半分くらいの人が残っていて、その中にはゆりちゃんもいた。
「アキさーん!どこ行ってたんですかぁ」
「ごめんごめん、トイレに」
「…トイレにアイス買いに…???」
「いや、これはその…色々あって。」