メランコリック・ウォール
第11章 金魚
注文したお酒が届き、隣のテーブルに座った桜子ちゃんや森山さん、他のおじさんたちとも乾杯した。
「さて、アキさん」
「なあに?」
「私今日は、パーッと飲むぞって決めてたんです!」
「うんうん(笑)」
「なので、飲みます!」
「よおし、飲んじゃおー!」
…
飛ばして飲むこと30分、早くも酔っ払ってきた私たち。
時折やってくる関係者と談笑を挟みながらも、隣のテーブルにいる森山さんと桜子ちゃんが気になってしまう。
「あぁ~ん、森山さんってお酒つよい~」
甘える桜子ちゃんが何だか羨ましい。
…森山さんが私の視線に気付き、とっさに目をそらしてしまった。
「アキさあん?アキさんてば~」
「あ、ごめんごめん。何の話だっけ?」
「アキさんの、好きな人の話ですよう!まだ情報が少ないんですからぁ~!教えて下さいよぉ!」
答えようとしたその時、森山さんが私の隣にやってきた。
「楽しそうに飲んでんね。俺もまぜて」
「あっ森山さん!今ね、アキさんの恋バナを聞き出してたところなんですよ♪」
「…ふーん?それは是非聞きたいね」
彼はいじわるな笑みを見せると、私に言葉を促すように目をほそめた。
「こ…恋バナって、ちょっと大げさだよぉ」
私の言葉を聞いてか聞かずか、「どこまで聞いたの?」と森山さんは言う。
「えっとですね~♪…あっでも…これは女同士のヒミツの会話なんです!森山さんに話したら私が怒られちゃうっ!」
ゆりちゃんはそう言うと、またお酒をグビッと飲み込んだ。
「俺も聞きたい。…ね、いいだろ?」
「う…うぅん…」
「ほら、いいって。なに聞いたの?」
いつになく楽しそうに彼は言う。
「アキさん、良いんですね?…おっほん、ええと、アキさんの好きな人は…背が高くて、」
「ほー」
「歳が近くて、イケメン。だそうです。」
「ぷっ(笑)」
吹き出す森山さんに、私は顔から火が出そう。
「な、なんで笑うのよ!」