メランコリック・ウォール
第11章 金魚
「いや。そんで、他には?」
「他に…?う~ん…」
「アキさん、これ以上情報くれないんですよぉ!もどかし~い」
ゆりちゃんが嘆く。
「手が…あったかい人」
それを聞くと2人は途端にニヤニヤし、そのうちクククッと笑った。
「へぇ、手がねぇ…」
森山さんは言いながら、テーブルの下で私の手をそっと握る。
「……っー」
「っていうか、好きな人なんていたんだ、アキさん。」
「あぁっ、そこは大人の事情ですから!カタイこと言わずに、恋バナを楽しみましょう?♪」
「もちろん」
なんだか2人が意気投合したとき、トイレから戻ってきた桜子ちゃんがやってきた。
「あ!私も入れてくださ~ぁい♪なになに?恋の話?ふふっ♪」
一瞬ゆりちゃんの顔が曇るが、すぐに元の調子に戻る。
「大人の恋の話だから、アナタにはまだ早いんじゃなぁい?」
「えぇ~私も仲間に入りたいですぅ。若いけど!」
「…いちいち嫌味なヤツっ」
ゆりちゃんがボソッとつぶやき、私がなだめる。
「えっとぉ~じゃあ~。森山さんの好きなタイプはどんな人ですかぁ?」
「今、アキさんの話してたんだけど」
「え~そうなのぉ?アキさん、どんな人が好きなんですかぁ?」
どうでもよさげに桜子ちゃんは問う。
「桜子ちゃんにはヒミツ!ね、アキさん?」
「あ、あはは…」
「んもうっ。お姉さんたちイジワルでこわぁい…!」
桜子ちゃんが森山さんの腕に絡み付き、また甘ったるい声を出す。
「ちょ、暑い…」
彼はすぐに振りほどくが、桜子ちゃんも引かない。
見てるこっちがなんだか恥ずかしくなるほどだ。
「私はぁ~、背が高くって…クールな人♪が好き~!」
あきらかに森山さんを見つめながら彼女は言った。
「…誰も聞いてないっつの(笑)」
ゆりちゃんのひそかなツッコミに笑えてきてしまい、私はうつむいた。