メランコリック・ウォール
第11章 金魚
「ね、森山さんは?どんな人が好きい~?」
浴衣越しに胸を押し当てているのが分かる。
若いって良いなぁ…スタイルも抜群の彼女には、たいていの男はイチコロだろう。
「俺は…」
3人で森山さんを見、言葉を待つ。
「俺は、アキさんみたいな人が好み」
言ってから私を見ると片方の口角をあげ、笑った。
「えぇ?!嘘でしょお?だってアキさん結婚してるよぉ?それに、年齢だってさぁ…」
「ちょっと!!」
私より先にゆりちゃんが声を荒げた。
「俺、若い子って苦手。根拠もなく強気だし(笑)ノリも合わない」
ついにハッキリ言ってしまった…。
私とゆりちゃんは目を見合わせた。
「……ふぅ~ん」
落ち込むかと思いきや、桜子ちゃんは平気そうにビールを飲み干す。
「森山さんって、おばさん趣味なんだ?あははっ!どうりで、なびかないわけだ~」
「お前、いい加減にしとけよ」
いつも以上に低い森山さんの声が鳴った。
「まぁ、まぁ…ほんとの事だし?あはは…」
私のフォローにも、ゆりちゃんと森山さんは耳を貸さず桜子ちゃんを見ている。
「自分がどれだけバカなこと言ってるか、もっと自覚したほうがいいよ。」
吐き捨てるようにゆりちゃんが言うと、桜子ちゃんはすねた様子で一度森山さんを見た。
しばらく沈黙のあと、彼女は席を立った。
「もういい!おじさんとおばさんじゃ話になんな~い。あ~あ、つまんないの」
オサムたちのいるほうへ駆け寄ると、「こっちおいで!」と歓迎され、元通りのテンションで輪の中へ入っていった。
「あっちのほうがおじさんばっかりなのに…」
つい私がつぶやくと、2人は張り詰めた糸が切れたように笑い出す。
「あははは!本当そうですよね!(笑)」
仕切り直しの乾杯をしてしばらく経った頃、ゆりちゃんが席を離れた。
「ハッキリ言ったね、森山さん」
「ん?あぁ、さすがにね」
「逆恨みされないか心配」
「大丈夫っしょ。…それよりさ」