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メランコリック・ウォール

第12章 願い事は


「ぅん?」


「アキさんの好きな人って背が高くて歳が近くてイケメン、だっけ?」


「もう!ほじくり返さないでよっ(笑)」


「ねぇそれって、俺じゃない誰か?」


「…どう思う?」


「俺、背は高いよ。183」


「うん(笑)」


「アキさんとタメだし、…イケメンだよね?」


「ぷぷっ!なにそれぇ(笑)」


「おい、冗談だからな!(笑)」


「ふふっ。」


「…他の誰かだったら、俺妬いちゃうんだけど」


頬杖をつきながら甘い視線で私を見つめ、テーブルの下でまた手を握った。




「…お風呂でね、ゆりちゃんにこれ…バレちゃったの」


胸元を指差し言うと、森山さんは少し驚いた。


「ほう。それで?俺って言った?」


「言ってないよ!でも、誰かそういう相手がいる…ってことは知られちゃった」


「…アキさんは、バレたら困るもんな」


「森山さんだって困るでしょう?」


「全然。…って言ったら嘘になるか」


「うん…」



もしもバレれば家庭は本格的に崩壊するだろう。


仕事上でもいろんな支障が出るはずだ。

最悪の場合、森山さんは仕事を失う。



「俺の気持ちは、今度ちゃんと話すから」



どこにも逃げられないような闇の中で、それでも”こんなことやめよう”なんて私には言えなかった。



”ちゃんと話す”…ーー

意外にも、軽はずみな関係ではなかったのかと期待してしまう。


でも、その期待の先には未来があるわけじゃない…分かってる…。



「森山さん…」


「キョウヘイって名前なんだけど。前にも言わなかった?」


「名前なら、知ってるよぅ…」


「呼んでくれないの?名前では」


「…だって、今さら恥ずかしい」


「二人のときだけ。」


「う、うぅん…」


「嫌?」


「嫌じゃない…っ。……き…キョウヘイ…くん」


「…!はははっ。いいね。新鮮」


「もうーっ…!」



「あぁ…今すぐキスしたい」

彼は私の耳元でささやいた。



「なっ…」

目が合ったそのとき、ゆりちゃんが戻ってきた。


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