メランコリック・ウォール
第12章 願い事は
最後にもう一度抱きしめ合うと、私たちは別れた。
エレベーターの前では桜子ちゃんが誰かと電話で話をしていて、通り過ぎるとき目が合った。
”ふんっ”
と、そっぽを向かれてしまう。
あぁ、きらわれたなぁ…。
部屋に入るとゆりちゃんはお風呂上がりの瓶ビールを1人で飲んでいた。
「おかえりなさい!」
「あ、ごめんね、ちょっと出てて…」
「いえいえ。シメに少しだけ、飲みません?ふふ」
「うん、いいね♪」
私のグラスにゆりちゃんがビールを注いでくれる。
チン、とグラスを合わせると、ゆりちゃんはそれを一気飲みした。
「わお、良い飲みっぷり。平気?」
「えへへっ!何だかもう少し酔いたくて。アキさんもどうですか?」
「……。よぉし、私も!」
グラスのビールを一気に飲み干すと、喉がカッと焼けた。
「うぅーっ。キンキン!良い気分」
「あははっ!ささ、ビールはまだありますから」
「ゆりちゃん、やけに飲んで飲ませるね?(笑)」
「はい!ちょっと…アキさんと女子トークしたいなって。でもなんだか勢いが足りないんで、お酒の力を借りようかと」
そしてまた、彼女はグラスに口をつけた。
少し黙ったあとで、意を決したようにゆりちゃんは言った。
「私、謎がとけた気がするんです」
「…?なんの謎?」
「アキさん…森山さんと…」
途端に頭が混乱する。
「…え?」
「アキさんの言ってたあの…相手って、森山さんじゃないですか?」
「……どうしてそう思ったの?」
「森山さんは、アキさんを見る視線がもうバレバレだし…それに、さっきも”アキさんみたいな人が好き”って自分でも言ってましたよね。それで、アキさんからのヒントは身長が高くて歳が近くてイケメン!これって森山さんかなって。」
「な、なるほど…」
「私が席に戻ったとき、2人すっごく距離が近かったですし…」
「…」
”キスしたい”と耳元でささやかれた次の瞬間、ゆりちゃんが戻ってきた記憶が蘇る。
「今も、森山さんに会いに行ってたのかなー、って…」