メランコリック・ウォール
第13章 ゆりちゃんの秘密
「だって、こっちが恥ずかしいです(笑)」
「あはは。普通にしててよ、お願い。まぁ彼には、ゆりちゃんに話したこと言うと思うけどね」
「えぇ、大丈夫なんですか?」
「…うん?大丈夫だと思うけど。どうして?」
「いや…トモキくんにはとても言えないなって…」
「怒られちゃう?」
「多分…バレるのすごく怖がってるんで」
「まぁそうだよね…おカタイ職業でもあるし、うちは取引先だし…」
「そうなんですよね…なんだかうらやましいな。…あ!来ましたよ森山さん」
ドキッと心臓が鳴る。
「…ほんとだ」
平然を装いながらも、今さら自分がスッピンであることを思いだし顔を伏せる。
「良いんですか?挨拶しなくて」
「でも…すっぴんだもん」
「あはは!アキさん…少女の顔してますよ。すっごく可愛い~!」
「からかわないでよぉ(笑)」
食事を済ませ、大広間を出る。
キョウヘイくんの隣を通るとき、手で顔を隠しながら「おはよう」と言った。
「…?おはよ。」
不思議そうな顔で返す彼を横目に、さっさと廊下へ出た。
「そういえばオサムさんも社長も、いなかったですね」
「まだ寝てるんでしょ、たぶん」
「アキさん、朝風呂入ります?」
「うん、せっかくだから入ろうかなぁ」
エレベーターに乗る直前、うしろからキョウヘイくんが早足でやってきた。
とっさに浴衣の袖で顔を隠す。
「え、何なの?」
「…なにが?」
「なんで隠してんの??」
「べ、べつに??」
ゆりちゃんはニマニマと私たちのやり取りを眺めている。
じゃれ合いながら3人でエレベーターに乗り込むと、キョウヘイくんが私の腕を掴んだ。
「ちょ、マジで何なんだよ(笑)」
「やめて、…すっぴんだから…っ!」
「…え?」
拍子抜けした様子のキョウヘイくんの隣でゆりちゃんがクスクスと笑う。
「なにそれ、べつにいいじゃん。見たい」
「ダメ」
「お願い」
「ダメ」
「ちょっとだけ」
はたから見たらおかしなやりとりをしながら、エレベーターを降りる。