メランコリック・ウォール
第14章 スコール
いつも痕をつける箇所までおりると、卑猥な音を立てて舐め上げられた。
「んぁ…キョウちゃん…、」
「ん?」
「だめって、…もう……っ」
彼は少しだけ腰を動かし、秘部にリズミカルな刺激を送る。
「あっ…あぁ…っん…やぁあぁっ…ーーー」
鎖骨を強く吸い上げられると同時に、私はキョウちゃんにしがみついて果てた。
お尻がひくひくと痙攣する。
一線を超えたわけでも、裸になったわけでもないのに…
「イッちゃった?」
「もうっ…いじわる。恥ずかしくて死んじゃう…」
「ははっ。なんでだよ。俺には最高の収獲だけど?」
そっと私のシャツのボタンをひとつ閉めてくれた時、テレビでは”このあと5時からの特集は…ーー”とアナウンサーが言う。
「もうこんな時間だったんだ」
「そろそろ現場終わる頃だな」
「うん…」
「俺は、ずっとここにアキが乗っててくれてもいいけどね」
「だ、だめだよぅ!」
急いでキョウちゃんの膝からおりると、洋服を整えた。
「アキさんって、こんなにいやらしいカラダなんすね」
ニマニマとした表情をし、仕事上での口調で彼が言う。
「むぅ…」
頬を膨らませて睨む素振りをすると、キョウちゃんの顔はほころんだ。
「ははっ。…アキ、もう一回だけ」
手首を引かれ、また唇を重ねた。
「キョウちゃんの、いやらしいのが…当たってたから…だもん…」
「健康的って言ってくれる?」
見つめ合い、やがてお互いにクスクス笑った。
途端に、私は何をしているのだろう?と我に返る。
夫や義父と営む会社で、こそこそ作業員の男と…こんな事を…。
罪悪感にも似た、言葉にならない感情が渦巻く。
しかし目の前にいる彼を見れば、この気持ちに抗えない軟弱な自分がいる。
抗えないどころか、自らもっともっと先を欲しているのだから…もう、どうしようもなく不毛な恋に溺れている女だ。
…
「キョウちゃん、お茶、入れ直すね」
「ん、あぁ。ありがとう。冷えたしな」