メランコリック・ウォール
第15章 独占欲
よれたタンクトップ、不潔に見えるトランクス。
「はぁ…ーーー」
ちゃぶ台の上には前に見つけたDVDとは違うAVが2枚並び、電源の切られたテレビにはイヤホンが刺さっている。
私は戸を閉め、自室の掃除に向かった。
”18歳”
”新人ギャル”
”中出し”
チラッと見えた卑猥すぎる写真と、ワードの破片が頭から離れない。
昼間から若い女の子に欲情し自慰にいそしむ夫に、まさか触れることなど。この先ももう考えられないだろう。
…
その夜、3日ぶりにキョウちゃんと電話で話した。
「会いたいな」
「ふふっ、昨日会ったよ」
「仕事で、な」
「うん…」
「行きたいとこ決まった?」
「うぅん…考えたんだけどね、」
「うん」
「普通のデートがしてみたいな、って…」
「普通の?」
「そう…」
「たとえばどんな?」
「え、映画見たり、アイス食べたり、手を繋いで歩いたり……?」
「はは、なるほどね。じゃあ、そうしよう」
「うん!」
「…少し遠くに行くか。知ってる人が誰も居ないとこ。」
「そうだね…」
「今日は何してた?」
「ん?お掃除したりね。いつもどおり。キョウちゃんは?」
「特に何も。夕方、DVD借りてきたくらい」
ふと、今日オサムが見ていたであろうAVが頭に浮かぶ。
「…」
「アキ?」
「…えっちなやつ?」
「はははっ、残念ながら違う。ゴリゴリのアクション、車の」
「あはは、そ…そっかぁ」
「なんでそう思った?」
「え、いや…男の人だし…?」
「偏見(笑)っていうか俺、そんなの見るよりアキのこと考えれば一発だから」
電話の向こうでキョウちゃんはケラケラと笑った。
「キョウちゃんは、その…」
「んー?」
「しないの?…」
「自分でってこと?」
「うん…」
「どうしたんだよ(笑)…ん、そりゃ~、健康な男だからね。たまにはするけど。…嫌なの?」
「ううん、そういうんじゃないの。聞いてみただけ…あはは」