メランコリック・ウォール
第15章 独占欲
「でもAVなんて全然見てないな。アキがいやらしい顔見せてくれるから」
キョウちゃんの低い声が、耳に優しくまとわりつく。
「んもう、やめてよ…」
「ふふ…。アキは見んの?やらしいやつ」
「み、見ないよぉっ…!でも、そういうのがうちにあって…前に初めてパッケージ見たときは、びっくりした」
「どういうこと?…あぁ、オサムさんの…とか?」
「う、うん…」
「そっか。まぁ…俺も同じ男だからなぁ、否定は出来ないけど。アキと一緒に暮らしてるのに、贅沢な人だ」
煙草に火を付ける音が聞こえる。
「もしオサムさんとそういう事があったら…キスマーク、ばれちゃうね」
「…ありえないよ。」
「そう?」
「うん…。あの人ロリコンなの。私のこと家政婦のおばさんくらいにしか思ってないから」
自分で言っておきながら、何だか情けなくなる。
私は一体どうして結婚したのか、どうしてオサムや義父と一緒に暮らしているのか、なにもかも分からなくなった。
「そうじゃないとしたら?」
「…え?」
「オサムさんがアキを抱きたかったら、どうするの」
フゥー…、っと煙を吐いているのが分かる。
「どうするって…」
そんなわけがないのは分かっている。
でも、もしそういう展開になったとしたら…
「するよね。夫婦なんだし」
どこか投げやりにも感じる言い方でキョウちゃんがつぶやく。
「私は……私が触りたいのは、キョウちゃん…だけなの…」
「じゃあ、しないの?」
「したくない。」
「…俺とは?」
「……んん…。いじわる言わないで」
「ふふっ。…俺って子供だな~!アキにこんなこと言わせて、喜んでる。」
「ほ、ほんとだよ?主人となんて、考えられないよ…もう何年も前から」
最後の煙を吐き、灰皿で煙草をもみ消す。
見なくても、キョウちゃんの行動が手に取るように分かる。
「アキ。」
「ぅん?」
「俺が付けた痕、さわってみて」
「…ぅん…」
触れると、今日愛撫された記憶が鮮明に蘇る。