メランコリック・ウォール
第15章 独占欲
「アキがそこ感じるの、知ってる」
「…ーっ」
「そこだけは、俺の場所な。誰にもやらない」
「うん…っ」
「はぁ…今日のアキはずるかった。俺マジで狼に変身するかと思った。はは(笑)」
いっそのこと、すべて投げ出して変身して…私を襲ってくれたら良いのに。
そんなことを望む自分を、もう見て見ぬふりはできない。
「…変身、しないの?」
「ん?んー…ヤリたいだけじゃねえの。全部が欲しい」
「ん…」
「ま、そりゃめちゃくちゃに抱きたいけど。文句ある?」
「ふふっ…、無い。」
その後、キョウちゃんとの電話を切ってからも私に点きかけた火は消えず、また自分を慰めた。
キョウちゃんの硬くなったそれは、どんなだろう……そんなことを考えるだけで、私の下半身は期待に震える。
彼の指や舌で翻弄される自分を思い浮かべれば、絶頂はいとも簡単だった。
同じ屋根の下、夫婦である男女がちがうものを対象に自慰にふけるなんて…。
果てたあとで、私は他人事のようにそんなことを考えていた。
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8月もなかばを過ぎた頃。
その日、私とゆりちゃんは大きなクーラーボックスにジュースやアイスを詰めていた。
現場に差し入れをすると言っても、人数が人数なだけに量も多い。
後部座席に、どすん!とクーラーボックスをふたつ積み、ゆりちゃんを助手席に乗せて走り出した。
「10時の休憩に間に合いそうですね!」
「そうだね!みんなアイス喜ぶだろうな。暑すぎるもん…」
「私たちはクールビズですけど、現場の人たちは作業着ですよね?死んじゃう…」
「うん…ホント、死んじゃうよね…」
クーラーの効いた車内。
むこうの道路では、ゆらゆらと陽炎(かげろう)が揺れている。本当に暑い日だ。
私もゆりちゃんも、夏の間はクールビズ。
今日はふわっとしたパフスリーブのトップスに、少しタイトなスカート。
最近ひとめぼれしたこのトップス、キョウちゃんは好みかなぁ…。