メランコリック・ウォール
第3章 意外な素顔
やがてオサムも起き出すと、男たちは仕事の話を始める。
事務員ではあるものの現場の話は分からない私たち女は、自分たちのためにこっそり持ってきたピクルスやチーズを広げ、ワインで乾杯した。
「アキさん、このピクルスすごくおいしい!」
ワインを片手にはしゃぐゆりちゃんが可愛い。
「ほんと?」
「はい!この…なんだっけ?えっと」
「パプリカ?」
「そう!このパプリカなんて特に。おいしぃ~~」
「よかったぁ。昨日仕込んでおいたんだ。」
義父とオサムは和食しか食べないので、普段こんなものを作ることはほとんどない。
私もピクルスを楊枝に刺して口に入れると、ぱちっと森山さんと目が合った。
「良かったら食べる?ピクルス…」
「いただきます」
即答して楊枝を取る彼の手に、つい見惚れてしまう。
この一見ごつごつとした手が、本当はとっても柔らかで優しい事を知ってる…
「森山さん、これ!この黄色いパプリカ、めっちゃ美味しいです!」
「あぁ、じゃあ…」
へらっと笑いながら森山さんはピクルスを口に放り込んだ。
ちょっとドキドキしながら反応を待つと、彼はうなずきながら「うまいっす」と言った。
「でしょぉ~!?っていうか、森山さんってピクルスとか食べた事あるんですか?」
ゆりちゃんがからかうように言うと、森山さんは吹き出した。
「ぶはっ。それ、めちゃくちゃ偏見…(笑)」
お酒のせいか、ゆりちゃんがいるからか、今日の森山さんはいつもより柔らかな表情だ。
やっぱりゆりちゃんは、魅力的だなぁ。
あまり邪魔にならないように、2人に微笑みかけながらチビチビとワインを含んでいると、ゆりちゃんがトイレに立った。
男たちは仕事の話に熱が入っている。
なんとなく手持ち無沙汰な私は、手に持っていたワインをゴクゴクと飲み干した。
飲み終わると森山さんが私を見て、笑っている。
「大丈夫すか?」
「う、うん…なんで笑うの?(笑)」
「いや、良い飲みっぷりだなって…(笑)」
「ふふっ。このワイン美味しくて、つい」
私はさらにワインをついだ。
「へぇ。ちょっと飲んでみたいっす」