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メランコリック・ウォール

第16章 ラムネ味


”ピーーーーーッ!!”


けたたましいホイッスルの音が聞こえる。
休憩が終わりの合図だ。


「はぁ。行くか……」

「うん…」

「俺、このまま持ち場いくわ。ありがとな、アイス」

「ん。また…電話するね」

「おう、待ってる」


まだふわふわと快感の余韻が残るまま、ゆっくりと詰め所へ戻った。


「アキさぁん!休憩終わりみたいなんで、行きましょっか」

どこにいたのか聞かないゆりちゃんは、なにかを察しているようにも見える。

「うん、帰ろっか」


軽くなったクーラーボックスを抱え、私たちは事務所へと戻った。



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ある金曜日、仕事が終わるとオサムは足早に飲みに出かけていった。


「さっさと行っちゃいましたね、オサムさん」

ゆりちゃんが苦笑する。

「はは…まぁ、いないほうが気が楽だけどね」


金曜日になると義父と親方は近所の大衆酒場で飲むのが恒例行事で、オサムも不在となれば私は自由な時間が手に入るのだ。



ーーそれにしても、今日のオサムには何か違和感を感じた。

知りたくもなければ、たとえやましい事をしていても何とも思わない。

なのに、長年共に暮らしてきた勘だろうか、勝手に気付いてしまう自分が鬱陶しい。

どうでもいいのに…ーー。



「アキさん、今日はゆっくりできますね♪」

「そうだねぇ、…ゆりちゃんは?どこか出かける?」


「いえ…ハナキンなのに予定なしです(笑)」


「ほんと?じゃあ、久しぶりに2人で飲みに行っちゃう?」


「えぇっ!せっかくの自由時間なのに、良いんですか?嬉しいですー!」


こうして私たちは身支度を整え、歩いていける小さなバルへ出かけた。





「「かんぱーい」」


10人も入れば満員になりそうな店内で、ひそやかに乾杯をすると2人そろってビールを勢いよく飲んだ。


「くぅーっ、生き返ります」


「ねっ。」


一口ステーキやアヒージョをつまみに、いちいち”美味しい”と言いながら女2人の時間を満喫する。


「トモキくんとはあまり会ってないの?」


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