メランコリック・ウォール
第17章 自責
「ですよね。…オサムさんがもし他の誰かとしてても、なんとも思わないんですか?」
「うーん……。キモ!って思うかな」
「えぇ?あははは!」
「嫉妬とか、怒りとか、そういうのは全然。そういえば今日も、あの人おかしかったんだよね」
「今日?」
「うん。飲みに出かけたでしょ?なんか違和感が…ね」
「女の勘ってやつですか」
「どうかな、ふふ」
想い人と不純な関係でいる私たちは、お互いに唯一こころおきなく話せる相手となっていた。
人には話せないタブーな内容でも、同じような境遇と分かれば口が緩む。
「未来ってさ…」
「はい?」
「いや、先のことを…ね、考えたりする?トモキくんとの」
「うぅん…。しますよ、でも…良い気分のものと、最悪な気分のものに分かれます」
「…よく分かる。」
「この先、彼は奥さんと子供と将来を築いていく。私は…?どうなるんだろう?って、よく落ち込みます。」
「うんうん…」
「自分の意志で持った関係なのに、おかしいですけどね」
「トモキくんとは、そのあたりの話…するの?」
「1度だけ…。自分は家庭にお金を与えるだけの道具で、夫婦の間に愛情は無い、って。子供がいなければ離婚していただろうって…」
「そうなんだ…」
「でもやっぱり、子供に罪は無いですから。奥さんから彼を奪い取りたい!って強く思うときもあります。だけど…子供のことを思うと…」
「うん…。会ったことあるの?子供に」
「いえ、無いです。彼の子なら会ってみたいし、一緒に遊べたら楽しいでしょうね…でも、中途半端な気持ちで子供を巻き込めないよねって、彼と話したんです。」
「そっか、結構ちゃんと、いろいろ話してるんだね」
「アキさんたちは、どんな話するんですか?そういう、ちょっとダークな部分っていうか」
考えてみれば、そんなに深刻な話をしたことがほとんどない。
これからどうやって、どんなふうに一緒にいようかなんて約束も。
生き方も。