メランコリック・ウォール
第17章 自責
コツコツとパンプスを鳴らし、ゆっくり歩きながらゆりちゃんとの会話を思い返す。
何をするでもなく携帯をひらき、キョウちゃんへの発信履歴を眺めた。
いつも、私から電話する…それは、キョウちゃんが私の生活を考慮してくれての事だった。
まさかキョウちゃんと私が夜な夜な電話でお喋りしているなんて、オサムと義父は想像もしていないだろう。
日中に熱くなったアスファルトがゆっくりと冷えてくる感覚と、夏の夜の匂いがする。
私はキョウちゃんへの発信ボタンを押した。
…
「もしもし」
数回目のコールで彼が出る。
何だか少し息が荒い。
「キョウちゃん。何してた?」
「今、風呂から出たらケータイ鳴ってたから(笑)急いで出た」
「あはは、そっか。ごめんね、タイミング悪かった」
「全然。待ってたから。」
「ん…。今ね、ゆりちゃんと飲んでたの。解散したところ」
「お、そうなんだ。楽しかったか?」
「うんっ!少し飲みすぎたかな(笑)」
「歩いてんの?」
「うん、そう」
「迎え行くよ。どこ?」
「えぇ?大丈夫だよぉ、事務所のすぐそばだから。」
「本当に大丈夫か?こけるなよ」
「うん、平気」
「別に…すぐ行くのに。っていうか1人で歩かないで、店から俺を迎えに呼べよ!」
「えへへ、ありがとう。今度はそうさせてもらいます」
「おう。帰るまで電話つないでおこう」
「うん…」
彼の優しさや気遣いが嬉しい。
みんなに優しいタイプじゃないと分かっているから、なおさらだ。
本当は5分も歩けば着くところを、私はゆっくりゆっくりと歩いた。
「ゆりちゃんにね、普段どんな話するんですかぁって聞かれたんだ」
「俺たちが?」
「そう」
キョウちゃんは、私たちの関係をゆりちゃんに打ち明けたことをもうすでに知っている。
「ははっ。そんなの知りたいか?女は難しいな」
「女はこういう恋バナが大好きなんだよ。ふふ」
「それで、なんて答えた?」