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メランコリック・ウォール

第18章 堕


「お前?そんな呼び方される覚えはないです」

「あぁ?!」


「だいたい、仕事が終わって誰よりも早く上がって、朝帰りしといてずいぶん偉そうにするのね」


「…チッ。うるせえな。勝手だろ、俺の」


「それじゃ私も好きにさせてもらいますね」


ぷいっとそっぽを向き、さっさと階段を上がった。


「おい!!…チッ。階段、掃除機かけとけよ!」


何度舌打ちされても、なんとも思わない。

掃除しろなんて、どの口が言うのだろう。


朝から疲れた…ーー。





その日、私は部屋にこもりっきりだった。

夕食だけ作り、居間に用意してまた自室へ戻る。

オサムとも義父とも顔を合わせなかった。



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月曜日になってしまった。


昨夜もオサムは出かけていって、夜遅くに帰ってきた。

キョウちゃんとは連絡も取らず、最後の会話を思い出しては涙ぐんでしまう。


食欲も湧かずに、一睡も出来ないまま朝を迎えた。
それでも、業務はこなさなければならない。


2人の朝食の支度をしているとオサムが降りてきたが、会話はない。

ふてくされた態度で黙って朝食をとっている。


義父もやってきて朝食を食べ始めると、「アキちゃんは食べないのか?」と心配している。


「ええ、ちょっと食欲がなくて。」


それだけ答えると、私は仕事の支度をした。







事務所へ出てしばらくすると、親方とキョウちゃんがやってきた。


「おはようさん」


いつもキョウちゃんは親方よりも早く来ていたのに、今日は違った。


「おはようございます」


普段通りの挨拶をしようと努めたけれど、その声は少し重くなった。


キョウちゃんはペコっと軽く頭を下げ、中に入ってきた。


やがてゆりちゃんも出勤してくる。


「おはようございまーす!」


いつもの調子で明るいゆりちゃんは、私の顔を見るとすぐに表情が曇る。


「アキさん、なんだか顔色が悪いですよ…大丈夫ですか?」

「う、うん!大丈夫…。ごめん、ちょっと急いでやることがあって。お茶と書類、お願いできるかな?」

「は、はい…っ!」


いつもは私がやるお茶出しと書類の受け渡しをゆりちゃんに頼んだ。


今はとても、キョウちゃんに近づくことが出来ない…。

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