メランコリック・ウォール
第20章 月と星
初めて一緒に電車に乗る。
なんだか嬉しい…!
「アキ、嬉しい?」
私、無意識に口に出していたんだろうか。
「どうして分かったの?」
「なんか最近、アキの表情読めるようになってきた気がする。ははっ」
キョウちゃんはつり革につかまって、もう片方の腕で私を支えた。
「ほんとう?それじゃ、隠し事できないね。ふふ」
…
ふたつ隣の大きな駅で降りた。
ここは大きな街で、お店も人もたくさんだ。
「はぐれんなよ」
「私、子供じゃないよぅ!」
「はははっ」
手を引かれ、午前中の日差しが差す商店街を歩く。
「なにも決めてないな。どうする?」
「そんなに時間ないでしょう?」
「そうだな…ちょっと遊んで、昼飯食ったら…」
「ん、分かった」
ほんの数時間のデートでも、こうして手をつないで歩けることが嬉しくてたまらない。
「デートって普通はどんな事するもんなの?」
「…私、そういうの全然分からない…」
「あは。アキはどう思う?デートってどんなことするイメージ?」
「えっと…。映画見たり、水族館に行ったり、ドライブしたり…、」
「うん?」
「あとは…うぅん。…おそろいのものを、一緒に選んだり…?」
「それでいこう。」
「えっ」
「今日は時間ないから、映画も水族館もまた今度だけど…」
「う、うん」
「おそろいのものってたとえば?まさか服?」
「ふふっ!まさか。ペアルックはさすがに恥ずかしいよぅ」
「だよな(笑)じゃあどんなもの?」
「なんだろう…ストラップとか?でも今はスマホだもんね…」
「とりあえず、適当に店入ってみっか。」
路面に並ぶ店はどこも魅力的な飾り付けで、見ているだけでも楽しかった。
「あ、…ここ、良いなぁ」
「ん。入ろう」
気になったお店のショーウィンドウには、どこか洗練されたアクセサリーや雑貨が並んでいる。
「わぁ、…これ、すごく可愛い~!」
一見、地味なパスポートケース。
本皮で作られているというそれは、内面に繊細な羽模様がうっすらと施され、とっても私好みだ。