おにぎり短編集
第2章 カレーライス
人が空くのを待って立ち上がると同時に、コートのポケットが振動した。
ーー震えるスマホが、着信を伝える。
待ち受けに出た彼の名前に、すぐに通話ボタンを押していた。
「いまどこ?」
耳に流れたその声に、ほっと息を撫で下ろす。
「乗り換えの駅、残業……遅くなった」
笑ってみたけれど、少し疲れている。久々に2時間以上の残業になり、デスクから動けず。切羽詰まった状況から解放されて、疲れが滲んでいた。
「……良かった。いや、良くないんだけどさ。なかなか帰ってこないから、何かと思った」
「ごめんね」
安堵するように息をした彼が、電話口で笑う。
少し空いたエスカレーターに足を乗せると、前を向く。駅構内にも人は溢れて。その流れにのって乗り換えのホームまで歩いた。
騒がしさに耳を塞ぎたくなるのは、わたしも彼も一緒だった。
疲れている時は、この駅の喧騒にうんざりしてしまう。
「……今日、カレーにしたよ。早く帰っておいで」
久しぶりに食卓に、並ぶカレーを想像して、落ちていたテンションが少しだけ上がった。
「カレー! 楽しみにしてる。じゃあ、電車乗るからまた」
「うん、気をつけて」
彼からの電話は直ぐに切れた。それでも、短い通話の中で、なんとも言えない温かい気持ちになっている自分に気づかされる。
ーー震えるスマホが、着信を伝える。
待ち受けに出た彼の名前に、すぐに通話ボタンを押していた。
「いまどこ?」
耳に流れたその声に、ほっと息を撫で下ろす。
「乗り換えの駅、残業……遅くなった」
笑ってみたけれど、少し疲れている。久々に2時間以上の残業になり、デスクから動けず。切羽詰まった状況から解放されて、疲れが滲んでいた。
「……良かった。いや、良くないんだけどさ。なかなか帰ってこないから、何かと思った」
「ごめんね」
安堵するように息をした彼が、電話口で笑う。
少し空いたエスカレーターに足を乗せると、前を向く。駅構内にも人は溢れて。その流れにのって乗り換えのホームまで歩いた。
騒がしさに耳を塞ぎたくなるのは、わたしも彼も一緒だった。
疲れている時は、この駅の喧騒にうんざりしてしまう。
「……今日、カレーにしたよ。早く帰っておいで」
久しぶりに食卓に、並ぶカレーを想像して、落ちていたテンションが少しだけ上がった。
「カレー! 楽しみにしてる。じゃあ、電車乗るからまた」
「うん、気をつけて」
彼からの電話は直ぐに切れた。それでも、短い通話の中で、なんとも言えない温かい気持ちになっている自分に気づかされる。